「プロセスアプローチの考え方、理解できていますか?」
プロセスアプローチと聞いただけで、何となくパスしたくなりますね。
そうです。2000年版の目玉とでもいうべき重要なポイントでありながら、
つい最近まで適切な解説がなされていなかった部分です。
プロセスという言葉は`94年版では若干使われておりましたが、
プロセスよりもその集合体であるシステムに対する管理が主体でした。
なぜ2000年版ではプロセス管理に重点が置かれるようになってきたのでしょうか?
ここで、ISO9001: 2000〔序文0. 2〕に記述されているプロセスアプローチについて、
少し考えてみましょう。
ISO9000基本及び用語の定義3.4.1によれば、プロセスとは
「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」
であると述べております。
これだけでは、何のことかよく分かりませんね。
では、同規格の〔2.4プロセスアプローチ〕の処を見てみましょう。
「インプットをアウトプットに変換するために資源を使用する一つの活動又は一連の活動は、プロセスと見なすことができる。」と記述しております。
つまり、企業が製品を製造したり、サービスを提供するために持っている仕組み
(システム)を構成している個々の活動又は一連の活動の単位を、プロセスと見なしてもよいということです。
例えば顧客関連のプロセスでは、人的資源を使用して営業活動を行っていますね。
インプットとしては顧客からの要求事項や、関連する法令・規制要求事項などがあります。
これらを確実に把握し、この注文に応えられるかどうかを判断した上で、後工程である設計プロセス又は製造プロセスへこれらの要求事項をアウトプットとして伝達します。
また購買プロセスでは、設計プロセスや製造プロセスから製品情報を
インプットとして受け取り、要求事項を満たした材料・部品を調達し、また適切な
協力企業の選定を行い、これらをアウトプットとして製造プロセスへ提供します。
このようにシステムを構成している様々なプロセスが、それぞれ目的を満たす
(適切なアウトプットを、それを必要とするプロセスにインプットする)ために、
経営資源(人、物、金、設備、施設、技術、外部資源など)を使用して、
活動を行っていることはご存じの通りですね。
プロセスには、製品実現に直接関わるプロセスのほかに品質方針・品質目標、
マネジメントレビュー、文書・記録管理などを運営管理するためのプロセス、
人的資源や設備、技術・情報などの資源を運用管理するためのプロセス、顧客満足、
内部監査、プロセスの監視・測定、是正処置・予防処置などの監視・測定、分析、
改善のためのプロセスなどがあります。
必要とされるプロセスの数は、組織の大きさ、複雑さ、製品又はサービスの種類などによって異なりますが、中小企業などでは一般的に責任と権限が集約されているため、
8〜12程度のプロセス構成となっている例が多いようです。
さて、もう一度ISO9001: 2000〔0. 2プロセスアプローチ〕の項を見てみましょう。
「組織内において、プロセスを明確にし、その相互作用を把握し、
運営管理することと合わせて、一連のプロセスをシステムとして適用することを、
“プロセスアプローチ“と呼ぶ。」と書いてありますね。
明確にされたプロセスは、実際の業務では営業業務、設計業務、購買業務、製造業務、生産技術業務、・・・などと呼ばれています。
それらのプロセス間で、様々なインプット及びアウトプットがやり取りされているわけです。それが具体的にどの様なものなのか、どの様に影響しあっているのか、それをはっきりさせることが、相互作用の把握であり、規格要求である「プロセス間の相互作用を明確にする」ことになります。
`94年版では、プロセスに対する管理ではなく、システムそのものに重点を置いて運用
してきました。その結果どうでしたでしょうか?
建設業の例で見てみましょう。
施工上の不適合やクレームの多くは、施工現場である作業所で発生します。
その責任はすべて作業所の責任者に負わせ、是正処置をとらせてよしとしておりました。
いま振り返ってみて、思い当たる方も居られるのではないでしょうか。
しかし、実際いつまで経っても不適合や顧客苦情が無くなりませんでした。
そこでシステムを縦断的に調査してみると、
■実はシステムの上流に位置する営業マンが、顧客の要求事項を十分に把握せず、
適当に補足して後工程に流していた。
■購買担当者は安ければよいと十分な調査もせず、新規取引先から材料を購入していた。
下請負施工業者の選定に際して、顧客からの紹介というだけで十分な評価を行わず
単価が安いという理由で採用し、現場へ派遣していた。
■設計担当者は、顧客からの追加要求事項を図面に織り込むことを忘れて現場へ
出図していた。
などなどの原因が潜在していたことが判明したのです。
これではとても作業所だけの是正処置では再発防止に対応しきれませんね。
2000年版ではシステムを輪切りにして、プロセス単位(活動毎)で運営管理を行う
という考え方に変わりました。
すべてのプロセスが効果的に機能することによって、それらの集合体であるシステムの
有効性が保証されるという考え方です。
大事な処ですからもう一度言いますが、一連のプロセスをシステムとして適用するためには、必要なプロセス間の順序のほかに、相互関係又は相互作用をあらかじめ把握し、そのようになっているか否かに重点を置いてプロセスの運営管理を行わなければならないということです。
プロセスの“相互関係を明確にする”ことは規格の要求事項です。
これは一体どのようなことをすればよいのでしょうか。
なぜ明確にしなければならないのでしょうか?
ISO9001: 2000年版DISの段階から、数多くの解説書が発行されてきましたが、
誰もが最も知りたい4.1章のプロセスに関して、適切に解説したものはほとんど皆無の状態でした。
当初は審査機関、コンサルタント、企業とも手探り状態で、審査の進展に伴い一部の審査機関とJABの間で意見調整が繰り返され、ここ数年で、適合のための条件がかなり明確になってきました。
従って当初は適合とされた内容でも、その後JABの見解に基づいて不適合と判定されるケースが、時たま見受けられます。
ここでプロセスの目的と活動について、もう一度確認しておきましょう。
プロセスには必ず目的があるということです。
その目的を満たすための活動が定められており(手順書・標準類)、日々定められた通りの活動が行われているはずですね。
例えば購買プロセスの目的は、[要求事項を満たした材料・部品の確保及び提供、所定の能力を有する協力企業の確保及び提供]ですね。
その目的を達成するために、
@供給者(取引先や協力会社など)の評価・選定、
A購買製品や供給者に対する管理の方式と程度の制定、
B購買情報の明確化と確実な伝達、
C購買製品の検証、などの活動が行われます。
購買プロセスの目的は、購買プロセスのアウトプットでもあり、それは順序として次工程となる製造プロセスへのインプットでもあります。
この様に、どのプロセスからどの様なインプットがあり、どのプロセスへどの様な
アウトプットが行われるのか。また、どのプロセスからどの様な影響を受け、
どのプロセスへどの様な影響を与えているのか。これらの関係が、
プロセス間の相互関係又は相互作用と呼んでいるものです。
もう一度ISO9001: 2000〔2.4プロセスアプローチ〕の項を見てみましょう。
「組織内で用いられるプロセス及び、特にそのプロセス間の相互作用を体系的に明確にし、運営管理することをプロセスアプローチと呼ぶ。」と記述しています。
またISO9001: 2000〔4. 2. 2 品質マニュアル〕c)項では、
「プロセス間の相互関係に関する記述」を含む品質マニュアルを作成することを要求しております。
これらの表現からも、相互関係又は相互作用を記述するには、
プロセスを結ぶ線や矢印、又は単なるフロー図では無理であるということが分かりますね。
2頁目の処で、建設業の作業所における不適合製品の原因は、
施工プロセス以外の様々なプロセスにもあり得ることを述べました。
不適合やクレームが発生した場合には、どのプロセスに原因があるのかを突き止めて、
そのプロセスの活動(仕事のやり方)に問題は無かったのか調査し、
改善を図ることによって再発防止が可能となります。
明確にされたプロセス間の順序(つながり)と相互関係(相互作用)が、
プロセスを遡って原因を明らかにするために必要な情報となります。
プロセスの相互関係に関する記述は、品質マニュアルに含めることが要求されていますが、これは規格の要求事項です。
審査の場面では、文書としての記述になっていなくてもそれだけでは直ちに不適合の指摘は行いません。
複数のプロセスの責任者に対して、担当するプロセスと関連するプロセス間の
インプット・アウトプットについてヒアリングを行い、いずれも明確な回答が得られなかった場合に、そのヒアリングの結果を客観的証拠として、『相互関係が明確になされていない。』という重大な不適合の指摘を行い、是正処置要求書が発行されることになります。
“プロセスの相互関係を明確にする”ということは、品質マネジメントシステムを継続的に改善するために、絶対に必要な準備であることをぜひ理解してください。
次に、プロセスに対する監視及び測定について少し触れておきましょう。
ISO9001: 2000/8. 2. 3では、運営管理されているプロセスに対して適切な方法で監視することを要求しております。その監視の方法については、「プロセスが計画通りの結果を達成する能力があることを実証するものであること。」としております。
ここで、計画通りの結果とはどのような状況を指しているのでしょうか。
一見分かりにくい
ようですが、考え方を変えてみると至極単純明
快な表現であることが分かります。
すべてのプロセスには必ず(果たすべき)目的がある、と言いましたね。
手段としての活動が、定められた方法で実施され、結果としてそのプロセスの目的が果たされていれば、そのことが「プロセスが計画通りの結果を達成した」ことになります。
では、「計画通りの結果を達成する能力があることを実証する」とはどのような意味でしょ
うか?
プロセスの目的を達成させるために計画された様々な活動を、計画通りの方法で実施し、その結果としてプロセスの目的が達成されているならば、引き続き計画通りの方法で活動を継続することによって「プロセスが計画通りの結果を達成する能力があることを実証する」方法に対応できますね。すこし特殊工程の考え方に似ていると思いませんか。
プロセスアプローチの採用は、継続的改善と並んで2000年版の大きなポイントです。
この部分を曖昧にしたままで品質マネジメントシステムを構築してみても、効果的な運用はあまり期待で出来ないのではないでしょうか。
(`94年版の反省が生かされていないことになる。)
自社の品質マニュアルを、一度じっくりと読み直してみてください。
2000年版の意図に対応出来ていますか?
ISO9001: 2000年版では、「プロセスの監視及び測定」を実施した結果、記録を残すことが要求されておりません。
そのため審査員は、重要確認事項でありながら
被審査側に対して記録の提示を求めることが出来ず「プロセスの相互関係」の時の様に、
ヒアリングを通じて実態を把握するしかありません。しかし、既に審議が始まっている2008
年版では、記録の維持が追記される予定です。
なお、ISO9001: 2008年版は「追補」程度で、大きな変更は無いとのことです。
このレポートが皆様の効果的なマネジメントシステム造りに、
少しでもお役に立てば幸いです。
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