〜軸足を定めて実務レベルに合わせる〜
「日常業務で書類が回っていない」、「毎年の維持審査で審査員のアドバイスに翻弄されている」、「取得して何年にもなるが仕事における具体的なメリットが見えてこない」、「経営者が本気で取り組んでくれない」など。
ISOを取得した企業の中にはこうした問題を抱え、システムの見直しの必要性を感じているところが少なくないようです。そこで、今回のレポートではこうした問題を解決するために、
そもそも品質マネジメントシステムの軸足とは何かを皆さんと一緒に考え、システムの不具合を整理していきたいと思います。
■システムの評価基準をもう一度考えよう
突然ですが、品質マネジメントシステムの良し悪しは何で決まるのかご存知ですか?
正解を言う前に、まずお断りしておきますが、審査員にほめられるシステムが良いシステムではありません。
本来、審査員の役割とは「規格要求事項に対する適合性の見極め」でしかありません。
審査員が書類を見て「良く出来ていますね」とコメントしても、それは経営のある一側面に対する評価でしかないのです。(審査員の多くは経営者を経験したことがありませんし、また経営コンサルタントとも違います)
ここで、ISO9001とは何を目的に作られた規格なのか思い出してみましょう。
ISO9001規格の目的とは、安定した品質をお客様に提供する仕組みを作ること。
そして、その仕組みを継続的に改善することで「顧客満足を向上させる」ことにあります。
このことは解釈を変えれば、顧客満足の向上により、リピート購買や再指名率を上げ、市場から選ばれる企業を目指すことを目的にしているとも読み取れます。
企業である以上、実利を追うのは当然の行為です。審査員からもらう通信簿よりも、
お客様の声の中にこそ、システムが上手く機能しているかどうかの答えがあるのです。
マネジメントシステムの見直しを行う着眼点がぶれないように、まずはこのことをしっかりと頭に入れておくことが重要です。さて、このことを理解したうえで、
次に品質マネジメントシステムの見直しの時期についてお話しておきましょう。
■放ったらしかは企業文化を悪化させる
ISO取得後、1年も経つと「ISOをやってよかった」という会社と、「ISOが仕事の負担になって辛い」という会社にはっきりと分かれてくるものです。
そして、「ISOが仕事の負担になって辛い」という会社の多くが、ISO9001を認証取得した後、すぐに気を抜いて放ったらかし状態にしています。
反対に「ISOをやってよかった」という会社は最初の取得までの期間、まずは自社の弱みを強化させることを目的にマネジメントシステムの構築をします。そして、認証取得後も引き続き自分たちの運営実績を評価しながら、自社のメリットに基づき見直しを続けているのです。
このことからも分かるように、マネジメントシステムを企業で根付かせるためには、
認証取得後の最初の1年の取り組み方次第で決まってくると言っても過言ではありません。
また、マネジメントシステムの運営は企業文化の形成にも直結してきます。
上手く回っていないシステムをそのまま放ったらかしにしていると、
「ウチの会社にとってISOは表面的なもの」というイメージが出来上がります。
こうしたイメージが固まると、社員のモチベーションもそれだけ下がります。
いざシステムを抜本的に見直そうとしても、一度しらけてしまったムードを変えるには相当の体力が必要となります。
反対に、取得後も続けて客の声に耳を傾け、会社の仕組みに反映させていると、
「ウチの会社のISOは本物。ウチはお客様を大事にする会社だ」という文化が芽生え、
社員の考え方や行動にも影響を与えていくのです。こうした企業文化を根付かせていくのは重要です。
「企業文化」と言う位ですから、最終的責任は社長にあるのは言うまでもありません。
中小企業では、企業文化に最も大きな影響力を及ぼすのは社長なのですから。
とは言っても、このレポートを読んでいる多くの方は、社内のISO担当者の方がほとんどで
ょうから、私がこのように書くと「だから、経営者を巻き込めなくて困ってるんだ」と言われることでしょう。
そこで、経営者を巻き込むヒントをひとつ。経営者を巻き込むためには、不適合の発生件数減少による作業コストの低下や、お客の再リピート件数など、実務レベルで役立つ報告をあげていくことです。
何せ、経営者にとって一番モチベーションが上がるのは、コスト低下と利益増加という実利の部分なのですから。
「コスト」と「利益」。ISOの担当者の方は、経営者が共感を得るために、こうした共通言語をもって経営者とコミュニケーションを取っていかないと、ただでさえ忙しい経営者は中々、ISOを自分の仕事として認識してくれないことが多いのです。
■PDCAサイクル、本当に出来ていますか?
随分、前置きが長くなりましたが、ここから品質マネジメントシステムの見直しについて
本編に入ります。「PDCAサイクル」という言葉はご存知ですよね?
ISO9001の普及とともに、中小企業でも4ステップの管理サイクルを指す「PDCAサイクル」という言葉が流行りました(それまでは、「PLAN−DO−SEE」といった3ステップで言われることも多かったのですが)。
しかし、言葉自体は知っていても、この管理サイクルを身に着けている企業は
少ないようです。
プラン(計画)、ドゥー(実行)まではできていても、チェック(確認)、アクト(改善)が出来ていないのです。
例えば、先月の会議で実行項目が決定したのに、今月の会議では審議事項にすらあがってこない。少し極端ですが、実際、多くの会社でここのような例が少なくありません。
アクトの前に、まずは然るべきタイミングでチェックを行う。当たり前ですが、
この当たり前のことをやらなければ、システムの改善もないのです。
ただし、ISO9001品質マネジメントシステムの運営が滞っている企業では、
このチェック機能を審査に受かるために「よそ行き」の内容にしているケースも多く見られます。そうした場合には、まず、チェック機能も実務レベルに合わせていく(「よそ行き」から「普段着」に着替える)ように整理すべきでしょう。
では、どのようにしてチェック項目を整理すればよいのか?
これを考えるのにひとつの参考資料をご提供します。
【資料1】をご覧下さい。ISO9001を取得した会社では、内部監査やプロセスの監視・測定などでマネジメントシステムのチェックを実施しいるはずです。
これらのうち、全く機能していないものやもっと強化したいものを【資料1】の表を使って整理されることをお勧めします。
なぜなら、このような表を使って「書いてみ見る」という行為は思考を整理するのに
とても役立つからです。人間は頭の中で考えをめぐらせているだけの状態だと十分な思考ができないもの。いったん、紙に考えるべき項目を外在化させてこそ、客観的な思考が出来たり、新たなひらめきが生まれることが多いという傾向があります。
品質マネジメントシステムの運営にお悩みの担当者様、是非、一度試して見てください。
(*外在化とは元々、心理学用語。心の中に内在する問題を周囲の外的なものに転化させることで治療を行うテクニック。ここでは思考を外に取り出すという意味で使っている。)
さて、今回お伝えしたことを要約すると、以下の3点になります。
@システムの運営評価はお客の声の中にある。
A取得後の1年が、企業文化を創る上で重要である。
B多くの会社はチェック機能が働いていない。
これを機能させるためには、一度チェック項目を整理する必要がある。
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