お宅の品質マニュアル、手順書になっていますか?
日頃何気なくお使いになっている品質マニュアルについて、少しお話ししましょう。
品質マニュアルは、品質に関して組織内に存在する総ての文書の中で、
例えば規程や基準、規則などの上位文書として、最高位に位置づけられている文書です。従って総ての部門・部署の人々によって理解され、その業務展開においては最優先で遵守されなければなりません。
品質マニュアルは、組織の大きさや事業内容の複雑さ、必要とされる文書体系などによって、その記述が異なるのは当然です。
一般的に中小企業では、組織の構成内容や運用されている品質マネジメントシステムが
割合コンパクトであるため、殆どの場合、品質に関する手順は品質マニュアル1冊の記述
(40頁前後)で済んでいるケースが大半です。
一方、リーディングカンパニーや歴史のある大企業などでは、既に完成度の高い、
比較的高度のシステムを保有しており、その文書体系は相当複雑に
(二次文書〜四次文書など)構成されております。
この様な企業の場合、品質マニュアルの記述はケース毎に必要な手順書への
アクセス方法を示した、いわゆる道路地図的な内容になっており、
それはそれで止むを得ない一面かと思われます。
このホームページをお訪ねになる中堅企業又は比較的小規模の企業の方で、
自社のシステムは少々複雑で分かりにくいと感じておられる方も結構多いのではないでしょうか?
品質マニュアルは、規格要求事項を受けて品質業務を遂行するための手順書であることは、ご承知の通りです。
通常、分かり易い手順書とは5W1Hで表現されます。
つまり、Why(なぜ:目的)、What(何を:目標)、Where(どこで:実施場所)、
Who(誰が:担当者)、When(いつ:実施時期)、How(どのように:方法)で構成されます。
中でも主語Whoが欠けた場合、特に欧文の場合では文章として成り立ちません。
しかしもっぱら、現実に主語が欠落していたり特定の管理職者の名称が入るべき処を、
“当社は”などと曖昧な表現になっているマニュアルもよく見かけます。
企業として対外的にある行為を行うことを宣言するような場面では、
当然“当社は”で結構ですが、計画を立てる人、実行する人、報告する人、検証する人、
承認する人など、誰が行うのか、主語をキチンと決めておかないとシステムの
形骸化につながります。
また、規格の要求事項「責任と権限の明確化」に対して応えていない(不適合)、
ということにもなります。
皆さんの品質マニュアルは、「○○すること」を誰がやるのか、
すべて明確になされていますか?一度じっくり読み直してみてください。
組織の規模、事業内容の複雑さなどによって品質マニュアルの記述が異なるのは
当然と言いましたが、構築した品質システム文書は、少なければ良いというものではありません。
特に中小企業の場合、その成熟度にもよりますが、仕事の仕組みは一部の
ベテラン担当者の個人的なノウハウに頼っている部分がかなりの比率を占めていることも事実です。
ISOの導入に伴って自社の管理や技術及びサービスのノウハウが体系的に整備され、
誰でも同じ尺度で仕事が出来るようになり、能率アップに繋がります。
手順書が整備されることによって、教育・訓練を適切に行うことも可能になります。
ベテランもいつかは職場を去ります。個人的ノウハウを組織のノウハウに転換し、
伝承を図ることも手順書の目的の一つです。
規格では`94年版で大幅な手順の文書化を要求したため、
結果的に重いシステムになってしまったことの反省から、
2000年版では6つの手順の文書化要求に止め、
あとは組織が必要か否か判断することにした訳です。
したがって、規格要求に無いから文書化の必要はないと一概には言えないわけです。
ISO 9004(JIS Q 9004)[4.2文書化]の項で述べているように、
必要な手順の文書化を規格は推奨しております。ここを一度じっくりとお読みになることを
お勧めします。
さて、話は戻りますが、今お使いの品質マニュアルは親しみやすい文書の形になっていますか?
例えば、細めの明朝体で9ポイント位の小さな文字でびっしりと書かれている品質マニュアルを使っているなんて方、忙しいときに目を通す気になれますか?
こうしたマニュアルは、組織の運用者は勿論のことですが、実は審査員泣かせの
マニュアルでもあります。
審査員は短時間でマニュアルを読み、その組織の品質システムの概要を
頭に入れなければなりません。この様にマニュアルが読みにくい場合、
往々にして手順書も同様な場合が多いのです。
審査員としては自分のことは言えませんから、これを読んで、「運用に当たられる皆さん、本当にご苦労さんですね。」と嫌みの一つも言いたくなります。
審査員は努力あるのみとしても、組織にとって最も重要な文書であり、
品質業務の手順書として活用し、絶えず改善の対象となる文書ですから、
それなりの工夫は必要でしょう。
私が企業の管理責任者としてシステムを構築した際の経験から
少し述べさせて頂きますと、「自分が読みたくない様な文書は人も読まないだろう」、
というごく当たり前の理屈から、文字は12ポイント。硬い印象の字体を避けて、
HG丸ゴシックM−PROを用いることにしました。
それにもう一つ留意した点は、規格の言葉を極力減らして
(キーワードとなる様なものは除いて)内部の人々が分かる言葉に翻訳して表現した
ことです。手順としての記述の中に、事例や解説を織り込むと一層理解され易くなります。
結果的には好評で、オールド・シニア管理職層からも抵抗無く読めるとの評価を得て、
順調に運用出来たことを経験しております。もし読み難いなと感じる品質マニュアルを
お使いでしたら、次の改訂の際に少し工夫をしてみては如何でしょうか。
なお、誤解の無いように付け加えておきますが、読み易く親しみ易い品質マニュアルを作ることと、規格が[4.2.3文書管理]で要求している「文書が読みやすく」とは直接関係はありません。ここでいう文書は読みやすくの意味は、汚損や破れなどが生じた読みにくい文書を用いた結果、誤って認識し不適合を生じることのない様に、必要に応じて取り替えや再入手を行うなど、常に文書を読みやすい状態に維持すること、を意味しております。念のため。
手順書は、基本的には少ない方が良いかも知れません。
ベテランの技術者ばかりの職場で、その手順を文書化してみても殆ど意味が無いでしょう。しかし、人によるバラツキがあったり、新人の配属や定期異動などがあるとするならば、
状況は少し変わってきます。
手順書の形で標準化を進めることによって、OJTを主体に教育・訓練の効果的実施が可能となり、誰もが同じレベルで仕事ができ、能率の追求も可能と
なります。
ISOは、最初に計画ありきのシステムです。
@やるべきことをキチンと計画する。
A計画通りに仕事をする。
B実施した仕事の結果を評価する。
C仕事の結果(アウトプット)に問題が(不適合品又は不適合状況の発生)あれば、
是正処置を実施する。
D是正処置の結果、仕事のやり方に原因がある場合には、そのやり方を変える。
という流れで継続的改善が進められていきます。
しかし、ここで仕事のやり方を規定した手順書が無かったとするとどうなるでしょうか?
計画に問題がなかったのか。原因の追及がやり難くなります。
そして歯止めとして仕事の進め方を改善しようと思っても、改善のしようがありませんね。
品質マニュアルは規格要求事項に対応した記述だけでなく、他の品質マネジメントシステム文書としての各種手順書を統合して記述しても一向に構いません。
全国ネットで支店・営業所を展開している某大手ゼネコンの静岡支店では、
膨大なシステム文書の見直しを進め、厚さは3p程度になりましたが品質マニュアルに
統合し、これ1冊ですべての品質業務の運用・管理が可能となりました。
ISO導入当初は審査機関を意識したり、先行他社のシステム事例をみたりして、
どうしても重い仕組みになりがちです。初めての経験ですからある程度はやむをえないでしょう。
システム運用の進展につれて、無くてもよい手順の削除や新たに必要な手順の追加などが出てくるかも知れません。
内部監査の仕組みをうまく活用することも、そのための効果的な手段となるはずです。
次回のレポートをご期待下さい。
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